映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「血と骨」監督・崔洋一 at MOVIX六甲

梁石日の同名小説の映画化。当初松竹で企画されていたのが1999年とのことなので、
5年がかりの崔洋一監督執念の一作。当初7時間半版の脚本があり、5時間版になり、
公開された2時間24分版となったらしいが、前編後編分けて5時間でも7時間でも
観てみたかったと言えば完全な無い物ねだりだが、それほどまでに画面の充実ぶりは
尋常ではない。1923年、韓国・済州島から大阪に渡り、今里で一家を成し、最晩年北朝鮮
寒村で死ぬ、金俊平(ビートたけし)なる男の一代記。コミュニケーションの手段が暴力と
セックスと金しかないという野獣そのものの男、親族はそれに耐え、時に反逆し、更に
やり返され、の繰り返し。一方で共産主義北朝鮮シフトの政治運動からは一歩引いて
いながら全財産を「寄付」して北に渡る、不可解なメンタリティ。
「この不可解な怪物」とは一体…いや、怪物とは不可解なものなのだろう、所謂虐げられた
民族の反駁、とは関係なくはみ出し続ける男に、観る者は拒絶しつつ凝視してしまう。
凄まじい映画だが、観終わってほっと安心した。最高の美術、撮影技術、音響、
そして全員素晴らしい役者たち。
日本映画が、TVCMの延長のようなパラパラまんが映画ばかりになってしまったら
どうしようと真剣に憂慮していたが、こんなちゃんとした映画が出来ることに安心した。