映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「大統領の理髪師」監督イム・チャンサン at シネリーブル神戸

韓国、大統領府の近くにある村(架空の村か?)を舞台に、1960年のイ・スンマン体制から
1980年のチョン・ドファン体制までの時代が一人の理髪師(ソン・ガンホ)の人生を通して
描かれる。理髪師ハンモは学はないが無類のお人好し。街に潜入した北朝鮮スパイ
(後にそれはスパイではないと判るが)の逮捕に協力したことをきっかけに、大統領(パク・チョンヒ
がモデルであることは明白だが劇中では語られない)の専任理髪師として大統領府に迎えられる。
突然の「名誉職」に自尊心が肥大するが、時の軍事政権は彼とその家族の人生を狂わせて行く
…というお話し。イ・スンマン体制の不正選挙、その後の軍事クーデター、パク・チョンヒ
の非道、ベトナム派兵、青瓦台襲撃事件、そしてパク暗殺、と韓国現代史を簡潔かつ
風刺を込めて鮮やかに描きつつ、軍事政権の犠牲者たる市民の悲哀と怒りを強烈にぶつけて来る。
観終わってツラさと重さでへとへとになるが、映画的センスの良さと力強さに正直羨望を
禁じ得ない。ソン・ガンホはホントに名優。傑作、お勧め。但し、ツラいよ。

大統領の理髪師 [DVD]

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