映画和日乗

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「愛についてのキンゼイ・レポート」監督ビル・コンドン at シネカノン神戸

1950年代、インディアナ州で生物学を教えるアルフレッド・キンゼイ(リーアム・ニーソン)は、タマ蜂の生態から
人間のセックス行動の原理を見いだそうと思い立つ。蜂の研究と同じく、これには膨大な数の「標本」が
必要と感じた彼は、全米中の成人男女からセックスについての経歴を聞き出す作業を開始、偏見や下世話な
好奇心に晒されながらも研究に没頭する…というお話し。研究の過程で自らバイ・セクシャルであることを悟ったり、
そのゲイのパートナーを妻に仕向けたりと、倫理的=キリスト教的、理性的行動を取っ払った、性的衝動の優位を実践する。
これにはカソリック原理主義者だった父親(ジョン・リズゴー)への反発が彼の行動原理となっており、この父親
は即ち'50年代のアメリカの性に対する倫理感覚の代表でもあるのだが、それよりも興味深いのはかなり怪しげでおかしげな
性に対する誤解が描かれている点だ。が、どうにも笑えない。全ての「あの時代の閉鎖性と誤解」は果たして21世紀の現在
も、完全に解放されたと言えるか。いや、解明と言った方が適切かもしれない。NOなのだ。更に複雑さを増していると言っても良いだろう。
「愛は科学では測り得ない」というキンゼイ氏の言葉に却って安堵する。
この映画、フランス人監督だったら全然違う解釈でつくるだろうな。

愛についてのキンゼイ・レポート [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • 発売日: 2007/11/28
  • メディア: DVD