映画和日乗

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「単騎、千里を走る。」監督・張芸謀 at 東宝関西支社試写室

北国の漁村でひとり暮らす剛一(高倉健)は、訳あって息子健一(中井貴一、声のみ)と断絶関係にある。
剛一は健一の妻(寺島しのぶ)から彼が病に伏していることを知り、東京に行くが、面会を拒否される。
健一は中国で仮面舞踊の研究をしており、彼の地の舞踊の踊り手(リー・ジャーミン)に「来年『単騎、千里を走る』という舞踊の演目をビデオ撮影に来る」と約束していた。そのことを知った剛一は、ビデオカメラ一式を抱えて中国・雲南省麗江という町に向かう。しかし、リーは事件を起こして刑務所に服役の身であった。剛一は周囲が止めるのも聞かず、刑務所に向かおうとする…というお話し。
前半、父と息子の確執の深さが今ひとつ伝わって来ないので、唐突に中国に渡り、更には頑なに刑務所での
撮影にこだわるという理由が伝わりにくいのだが、高倉健はあくまで高倉健なので「お願いします」と言われれば仕方がないのかな、と思っていた。しかし、ほどなく彼が刑務所での撮影許可を求める「ある方法」を取った時、高倉健高倉健ではなくなり、「父」となる瞬間に遭遇する。このシーンの素晴らしさには刮目せざるを得ない。
ここから張監督の独壇場となり、見るものを一気に高倉健神話の世界に引きずり込む。高倉健だけがなし得る
奇跡がここにはある。日本部分の演出は降旗康男監督が務めており、中国の高倉と日本にいる寺島の電話の
カットバックなどに統一感が感じられない部分もあるが、それを差し引いて余りある傑作。お勧め。映画好きな現首相も是非。ハンカチのご用意を。
'06年1月28日公開。

単騎、千里を走る。 [DVD]

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