映画和日乗

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「男たちの大和」監督・佐藤純弥 at MOVIX六甲

辺見じゅんの同名小説を実弟角川春樹がプロデュースした。
1945年4月、太平洋戦争末期の日本海戦艦大和による沖縄特攻の前後を描く。
現代、戦艦大和が沈んだとされる海域に行きたいと、大和乗組員の生き残りである神尾(仲代達矢)を、ある女性(鈴木京香)が訪ねるところから始まる。神尾は当初無視するも、彼女がかつての上官の娘であることを知り、15歳になる近所の少年とともに自らの船でその海域に向かう。15歳、それは神尾が少年兵として大和に乗り込んだ歳でもあった。時代は一気に60年前に遡り、大和での過酷な日々が綴られる。
この少年兵からの視点、という点がこの映画を成功させている。いざ沖縄へ向かう途中での戦闘シーンも、神尾少年兵と上官・内田(中村獅童)が生き残ることを見る側が知っていることにより、彼等の戦い方にサスペンスが働いていて迫力満点だ。常に優しい下士官、森脇(反町隆史)や知的な将校(長嶋一茂)が素晴らしい。
長嶋の説く、「日本は敗れてこそ目覚めるのだ」という一節にこの国家の持つ抜き差し難い愚かしさが伝わる。
同時に、司令長官は乗船しないことへの欺瞞もきちんと突いている。所謂東映調の浪花節特攻映画に収斂させず、現代的視点も交えた新味と、戦争遂行の愚劣という普遍を実に巧みにミックスさせたスタッフの手腕に敬服。
これに比べれば「ローレなんとか」なんかが骨なしチキンに見えてしまう。
敗戦時13歳の佐藤純弥監督、肌で知っている感覚は何ものにも勝るのであろう。お勧め、予断無くご覧あれ。

男たちの大和 / YAMATO [DVD]

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