映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「ブラックブック」監督ポール・ヴァーホーヴェン at 三宮シネフェニックス。

露悪趣味的演出でハリウッドを席巻したヴァーホーヴェン監督が故国オランダを舞台に第二次世界大戦中の対ナチスレジスタンス運動を描く。といっても圧倒的なテンションで一切目を離せないサスペンスの連続、どんでん返しのミステリーと、娯楽映画のファクターをこれでもかと練り込んで来る。
オープニングは1956年、イスラエルの小学校。この年、第二次中東戦争が始まるこの国で再会する二人の女性。「あなたユダヤ人だったの?」そう尋ねられて微笑むエリス(カリス・ファン・ハウテン)。今は小学校の教師だが、かつてはナチスドイツと戦うレジスタンス運動員だった。それも肉体を使ってドイツ軍将校に近づき、情報を得るスパイ。このエリスの過酷な運命は1944年、ドイツ占領下のオランダから始まる…というお話し。
あまり詳しく書くとネタバレになるので多くは書かないが、板チョコを巡る伏線の張り方には唸った。
ヴァーホーヴェンの演出はハリウッドでのそれとは趣きを変え、むしろクラシックだ。人物を横位置に捉えるフラットな画面で押し通し、音楽もベッタリと劇伴そのものなのだがこれがまた今風ではない良さを醸し出している。タッチは違うが「大列車作戦」('64)や、「鷲は舞い降りた」('77)などが思い出される「懐かしい」感じだ。
そして特筆すべきは本作主演のカリス・ファン・ハウテン、日本の女優は軽々しく「体当たりで演技」などと言うな、これこそが「体当たり」だ!お見事天晴。
こんな映画を待っていた、144分お腹いっぱい、最早死語だったかも知れない「血湧き肉踊る」というフレーズがぴったりの傑作。お勧め。