映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「パッチギ! LOVE&PEACE」 at 109シネマズHAT神戸。

前作から6年後の1974年。京都から東京に引っ越したアンソン一家。息子の難病治療の費用を捻出する為にアンソン(井坂俊哉)は危ない橋を渡り、アンソンの妹キョンジャ(中村ゆり)は芸能界入りする…というお話し。「パッチギ!」('04)の素晴らしさは「ガキ帝国」('81)以来「同じ歌を歌い続ける」井筒監督がアメリカン・ニューシネマのフレーバーを微かに効かせた高度な映画作劇術の集大成にあった。今回、冒頭とラスト、いつものように「同じ歌を歌う」のだが、それ以外は驚くべきクラシックぶりである。それは'60年代から'80年代前半までは微かにあった、山本薩夫今井正森川時久といった監督達が営々と撮っていた労働者階級の叫びを伝える映画のテイストに近い。宇野重吉を讃える描写や、馬淵晴子や米倉斉加年というキャストからもそれは伺える。このお二人が出演していた「異邦人の河」('75)という映画をふと思い出したりもした。
今こそ在日の苦難と被差別の歴史を声を大にして伝えなければ、という井筒監督の力みは、前作の「イムジン河」の歌声や、北村和夫のステップと歌声だけに暗喩させた「のど自慢」('99)の静かなる感動と真反対であり、果たしてどうか。
西島秀俊が演じた俳優や、ラサール石井の映画プロデューサー、モデルが想像出来てしまう。藤井隆ベストアクト。