映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「クィーン」監督スティーブン・フリアーズ at シネリーブル神戸。

英国、ダイアナ元皇太子妃の事故死に端を発するエリザベス二世女王の苦悩の日々を綴る。
立憲君主制ポピュリズム」というタイトルの政治論、法律論を実に解り易く見せられた感じ。単なるそっくりさんによる再現ドラマに非ず、実に特異稀なる立場に置かれた女性の人間性を描くことに腐心して観る者の目を離さない。
鹿狩りについてのメタファーを示唆するエピソードが秀逸なのだが、ローマ神話に於ける月の女神ダイアナが鹿追いの狩人であった、という「キネマ旬報」'07年5月下旬号の批評文を読んでああそうかと膝を打つ。実は本作、王室一家とブレア首相夫妻、英国官僚について「そこまでやっても大丈夫?」と思われるくらい踏み込んだ描写がある(ブレア夫人、あんなはすっぱなの!?)一方、ダイアナという人物に於いては、如何に大衆から愛されていたかのみしか描かれない。彼女が具体的にどのようにして王室をかき回したのかは曖昧模糊として置かれている。何か事情があったやに想像に難くないが、「描けない」ことをあの鹿狩りのエピソードに込めたのではないかと得心した。
スティーヴン・フリアーズ監督、「ヘンダーソン夫人の贈り物」('05)に続いて職人技を発揮、派手さはないものの手堅い。ヘレン・ミレン名演、実年齢は61歳とは驚嘆、さすが英国演劇界、層の厚みが違う。