映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「歩いても 歩いても」監督・是枝裕和 at 梅田ガーデンシネマ

三浦海岸の駅が出て来る。阿部寛夏川結衣と、その連れ子と思しき男の子とこれから向かう実家のことを話している。気疲れが想像される、連れ子と後妻。一方実家「横山家」では母(樹木希林)と娘(YOU)が後妻のことを蔑むような話しをしている、ここで示されるこの母の無邪気な残酷さは後々しばしば貌を出す。のしのしと歩く父(原田芳雄)も不機嫌そうだ、この不機嫌もまた後々その落差のある貌をのぞかせる。観ている我々は彼らの発する言葉を注意深く聞く事で、この家族の全体像を把握して行かなければならないが、そのスリルは極めて映画的純度が高い。
資料に依ると、是枝監督自身のご家族がモデルとなっているとのこと、しかし私小説臭さは殆ど感じられない。樹木希林とYOUの会話は、文字にすればそれほどでもないと思われるが、彼女達の間合いと呼吸で話すと、時に可笑しく、時にひどく残酷に聞こえる。長いカットの食卓シーンでもダレないテンション、完璧に計算されたダイアログの間合いと呼吸で見せ切る。たった一日の家族の出来事を描くこの映画、久しぶりにもっと長くてもいいなと思うくらい浸っていられた。
阿部寛はベストアクト。傑作、お勧め。

歩いても 歩いても

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