映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「20世紀少年」監督・堤幸彦 at 東宝関西支社試写室

少年少女の時代、誰もが抱く幼稚だが壮大なビジョン。歳を重ねるにつれ、いつしかそれは記憶の奥底に沈み、忘れ去られる。気がつけば、夢想する力すら摩耗してしまう大人の世界、いや社会。しかし、あの幼稚だが壮大な世界を生き直せるとしたら…。
原作は未読だが、1970年代サブカルチャーへのこだわりは映画と一致するところなのだろうということは想像に難くない。バカボン、ハットリ君、忍者部隊月光、ウルトラマン、そして太陽の塔。堤監督(52歳、ということは1973年当時は17歳か)の演出もいつも以上に嬉々としたテンションを感じる。2000年の大晦日に人類滅亡の危機が訪れる設定なのだが、既にその時を過ぎた現在に於いて、ここで描かれる全てが妄想であることは明確だ。ただそれが主人公たるケンヂ(唐沢寿明)の妄想なのかどうかは、三部作つくられるらしいこの作品の第一部では判然としない。第一部だけに、起承転結で言えば、起起起承くらいの展開か。映画としてどう、ということではなく、ひたすらにこの物語につき合えるということを楽しむ作品。