映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「鍵」監督・市川崑 at シネ・ヌーヴォ

「映画監督市川崑追悼特集」の一本。1959年大映作品。
言わずと知れた谷崎潤一郎原作。仲代達矢の異様なアップで始まる。今は国内では使われていないドイツ製のアグファフィルムは、白いドーランに赤みがさす発色で気味が悪い。登場人物が一様に能面のような無表情、抑揚の無い台詞まわし、誰も絶対に本当の事を言わないキャラクター、どうにも性的というよりはホラーの感覚。その昔、故淀川長治氏がこの映画について「機関車の連結と性交シーンをモンタージュするとは安っぽい」と評していたのを覚えていたのだが、元来市川崑という人の表現に艶っぽい感覚は薄いような気がする。ここでは谷崎的変態も滑稽でしかない。宮川一夫キャメラは京都の町並みのオープンに出るとため息が出るほど素晴らしい奥行きを描く。ラストはブラック感覚、やっぱりホラー。

鍵 [DVD]

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