映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「秋深き」監督・池田敏春 at 国際松竹

劇画調のバイオレンス活劇やホラーがお得意の池田敏春監督が、織田作之助原作という意外なチョイス。が開巻から大阪出身の西岡琢也脚本の筆致がくっきりと画面から浮かび上がり、西岡氏の自家薬籠であることが感知される。男の思い込みや嫉妬というテーマは「TATTOO[刺青]あり」('82)と同じだ。
視点を変えれば脆弱な「甘えた」("た"にアクセントの関西弁)なだけの輩なのだが、そうは描かない。佐藤江梨子演じる一代は、日本中の女がこうだったら世の中はもっと平和やで、と言わんばかりの男の妄想的理想像。初主演八嶋智人は張り切っている、針が触れ切った熱演ぶり。
2時間弱のひととき、このメルヘンに浸り切ってみるのは悪くはない。大阪北新地の夜間ロケは大変だっただろうな。あの梅田のキスシーンのクレーンショットは憧れる素敵なワンカット。

秋深き [DVD]

秋深き [DVD]