映画和日乗

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「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」監督サム・メンデス at 109シネマズHAT神戸

 ディカプリオ&ケイト・ウィンスレットの「タイタニック」('97)コンビが再び共演、ウィンスレットの夫、サム・メンデスが監督。先のゴールデングローブ授賞式で主演女優賞を獲得したウィンスレットは「監督の演出にクタクタになった」旨の発言をしていた。
1955年のアメリカ、サラリーマンの夫と元舞台女優の妻が郊外に移り住んで来る。子供は女の子がふたり。しかし夫婦関係は決して良好ではなく、なんとか家庭を維持したい妻は夫にパリ移住を提案する。軍隊時代パリに駐屯した経験のある夫は一旦は妻の提案に乗るが…というお話し。
傑作「アメリカン・ビューティー」('99)で皮肉たっぷりにアメリ中流家庭の崩壊を描いたサム・メンデス監督、舞台出身だけあって家庭劇が十八番のようだ。ディカプリオの通勤風景、勤め人達の出で立ち、動きから既に舞台調でリアリズムではない世界を規定する。
 夫として凡庸なディカプリオへの苛立ちで神経質丸出しのウィンスレット、このふたりの夫婦喧嘩のヒリヒリした緊迫感は圧倒的だ。そしてあの「元数学者」の闖入。二人の欺瞞を暴くマイケル・シャノンなるこの俳優の名演にアメリカ映画演劇界の底力を見せつけられる。
 微かに「めし」('51)のエッセンスを感じるこの脚本、小津や成瀬のような静謐なつくり方も出来たかも知れないが、芝居の圧倒的な力量で見せ切って現代アメリカ映画におけるRevolutionaryな映画となった。ラスト秀逸、傑作。
アニメとテレビドラマの延長映画が興収上位になる幼稚な映画民度の国ではヒットは望むべくもないが、お勧め。