映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「新宿インシデント」監督イー・トンシン at MOVIX六甲

若狭湾座礁した貨物船から這々の体で密入国した鉄頭(ジャッキー・チェン)。弟分の阿傑(ダニエル・ウー)と共に東京・新宿へ。当初は真面目に働く鉄頭だったが、一足先に入国していた婚約者(シュウ・ジンレイ)がヤクザ江口(加藤雅也)の妻になっていることを知って挫折。非合法な金儲けに手を染めて行くうち、台湾ヤクザのグループから嫌がらせを受けるようになる。足を洗った阿傑が襲われ、鉄頭は偶然命を助けた江口の配下に入り台湾ヤクザを駆逐する。やがて再び堅気の仕事を旗揚げしようとする鉄頭だったが、阿傑がクスリに手を出して人が変わったように暴れ始める…というお話し。
前半の、中国人密入国グループの活動の模様が実に緻密且つリアルに描かれ、監督・脚本チームの綿密な取材ぶりが伺える。映画全体に於いて、手垢にまみれた香港アクションものや日本ヤクザものと一線を画すリアルなテイストは実に新鮮。間違っていたらごめんなさいだが、ジャッキー・チェンが大陸生まれの普通の農民出身、という設定は初めてではないだろうか。これまでのイメージを捨て去り、立ち回りを一切封じたジャッキーの意気込みは、最近の中国寄りの発言とは無縁ではないだろう。
また、撮影部・照明部を日本のスタッフにしたことが大成功している(撮影・北信康/照明・渡部嘉)。これは決して贔屓目ではなく、「キネマ旬報」'09年5月上旬号のインタビューの中でトンシン監督がきちんと証言している。
発砲シーンやアクションシーンになると神戸ロケになっているのも注目。この点でもトンシン監督は「神戸はとても撮りやすいシステム」と絶賛している。「神戸フィルムオフィス」の苦労が忍ばれるが。
地味に公開されているのが勿体ない佳作、お勧め。