アメリカのアンチ・ヒーローの一人、銀行強盗ジョン・デリンジャーをマイケル・マンが描く。
デリンジャーと言えば、我々世代はどうしても1973年ジョン・ミリアス版のこちらが印象深い。
不細工顔で埃っぽいウォーレン・オーツがデリンジャー、それを追うパーヴィス捜査官をどっちがギャングが分からないようなベン・ジョンソン。ミリアス好みの男臭さムンムンだった。
さて、今回はデリンジャーをジョニー・デップ、パーヴェスをクリスチャン"バットマン"ベイルという男前スタイリッシュ対決となった。マン監督は銃撃戦につぐ銃撃戦、脱獄につぐ脱獄と息つく暇もないシンプルな構成で割り切っていく。衣装デザインにコリーン・アトウッドなる名前がクレジットされているが、一体どこのブランドなのだと関心が募ってしまうほどギャングも警察もカッコいいスーツ、全体ジョニー・デップの男前deショーに見えなくもない。そしてピカピカのトンプソン・サブマシンガンの美しいこと、スーツ姿の男達にこれがまたよく似合う。
もともとスタイリッシュに決めまくるマン監督のセンスだが、嘗て連綿とつくられたアメリカ製ギャング映画へのノスタルジーを排除し、古典的な時代色に化学変化をもたらすHDキャメラを使用することによって中間的な、これまで見たこともないようなルックを作り出していく。今作と同じダンテ・スピノッティ撮影監督のノワール「L.A.コンフィデンシャル」('97)のフィルムによるルックの方が良かったのではと思わなくもないが、そこは好みの問題だろう。
特筆はパーヴェス捜査官が部下の未熟ぶりに音を上げて要請するシカゴ警察からの助っ人捜査官のひとり、ステファン・ラングの凄腕ぶり。経験から来る捜査勘と狙撃の腕前が冴え渡る。渋い無表情で遂にはパーヴェス捜査官の本懐まで奪ってしまって助演男優賞謹呈。
カッコいい、ひたすらカッコいいことを追い求めたマン監督の映画作家魂には敬服する。
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