映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「戦場でワルツを」監督アリ・フォルマン at シネリーブル神戸

イスラエル、20数年前のイスラエル軍によるレバノン侵攻に従軍した男が戦友の映画監督(アリ・フォルマン)を訪ねる。26匹の犬に追いつめられる悪夢を繰り返し見る、と。それはかの戦闘で26匹の犬を射殺した経験によるPTSDなのかも知れないと語るが、映画監督にはその戦場での記憶が一切ない。これを機に彼はかつての戦友を訪ね歩き、レバノンでの出来事の記憶を辿り始める。一兵士にとって大義の感じられない戦争は、夥しい殺戮と、報復、そして無辜の民への虐殺の幇助を浮き彫りにする…というお話し。
CGアニメーションである。が、実写をネガ反転したようなルック、実在と思われる人々へのインタビューもあり、ドキュメンタリータッチの独特のテンションが続く。本作に登場する「サブラ・シャティーラ虐殺事件」は

http://4travel.jp/traveler/go_to_arab/album/10215698/

http://www.news.janjan.jp/world/0409/0409219075/1.php

これらのサイトを参考にすると少しは鑑賞前後の手引きとなるだろう。
ラストの数分は、映画を見慣れた人間には予想のつく展開。つまりこの数分の為のアニメーションなのである。歴史は繰り返す、だけでなくここでは反転する、と言える。あれほどナチスに虐げられた民族が、同様の虐殺に手を貸していたのだ。
今年のアカデミー賞外国語映画賞で「おくりびと」と競ったとのことだが、イスラエルの国家犯罪を告発する映画の受賞は難しかろう、しかしノミネートされただけでも"Change"な年だったということだろう。

戦火の記録:レバノン紛争 [DVD]

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今年観た映画70本。うち旧作5本。
ベストは「グラン・トリノ」、1馬身差で「母なる証明」更にハナ差で「チェンジリング」。今年はイーストウッド御大の横綱相撲。日本代表は「ヴィヨンの妻」が群を抜いていた。もう一本「1000年の山古志」も特筆。
来年はつくる方に復帰予定。

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