映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「FLOWERS」監督・小泉徳宏 at 東宝関西支社試写室

資生堂TSUBAKI」のCFの拡大企画。数年前にあった、調味料の会社がスポンサードして味噌汁のCFから拡大した映画があったが、あんなだったらどうしようと心配しながらスクリーンに正対したが、結論から言うと杞憂だった。
 1936年の、桜咲き誇る日本のどこかの町から始まる。劇伴音楽を載せず、音が極端に少ない静かな世界からの展開に、嗚呼我々は今いかに不快かつ不健康な雑音にまみれて暮らしているかを思い知らされる。嘗ての日本はこのように静寂に包まれていたに違いない、まずそこを気づかせる演出が良い。
 1969年の、雑誌編集者田中麗奈と官能作家長門裕之のやりとりが絶妙に可笑しく、あの頃の健康的というかノンポリ東宝娯楽映画のトーンと重なる。
 1977年の仲間由紀恵の運命には試写室中すすり泣き。ここぞというところであざといまでのスチール挿入演出にハマること受け合い。
フォトジェニーに徹したキャメラは見ていて飽きない。所詮シャンプーのCM、と思うなかれ。個人的には石川県穴水町でのロケーションをだいぶ以前から聞いていただけにエンドロールのクレジットで感慨にひたる。佳作。
 6/12公開。