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「オボエテイル」監督・芳田秀明、明石知幸、久保朝洋 at 神戸映画資料館

 岩手県盛岡市在住の作家、高橋克彦の小説を3話オムニバス形式で映画化。
 2005年に製作・完成していたが、足掛け6年ぶりの劇場公開となった。
 そのいきさつは「作品をコンテンツと呼び始めた映画界"お蔵入り映画"が続出する杜撰な内情」をクリックして読んで頂きたい。
 製作会社倒産のどさくさに35ミリプリントとスチールを紛失した、というのは俄には信じ難いが(35ミリプリントは巨大で重く、人ひとりで運ぶのも大変なもの)、ともあれブルーレイ版での上映となった。従って、どうしてもルックがくすんで見えてしまう。公開までの苦労というものは一部の作品を除いてつくられる映画に於いてはどんな作品にもつきまとう。
 「佳い映画なのに」というのは理由にならないし、「最低の映画」でも華々しく大公開されていたりもする。この「オボエテイル」が佳い映画なのかどうかは見る人それぞれであろう。
 しかし、1990年代のアルゴプロジェクトやディレクターズカンパニーには許され可能だったことは、果たして2005年時点ではどうだったのであろう。観客の質の低下のみをあげつらって高い志とささやかな射幸心だけで突っ走ることは、洋の東西を問わず最早困難な時代である。
 時代の潮目を読むことは最高責任制作者のみならず、監督を含め製作に関わる者には全員必要な時代であるということだ、と自戒を新たにした。
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