映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「川の底からこんにちは」監督・石井裕也 at パルシネマしんこうえん

「しょうがない」「中の下」「あたしなんて大した女じゃないんです」が口癖、自虐的かと思いきや押し寄せる不運と難題を前に開き直るヒロイン、木村佐和子(満島ひかり)。それでもメシを喰う金と雨つゆをしのぐ家(結構な豪邸)はあるので悲惨さは感じられない…という木村家の実家は、高度経済成長とインフラ整備が終わり、これからゆるやかな下降線を辿る一方であろう現代日本経済のメタファーのようだ。登場人物の殆どが賢くない、そして意気地がない。同じく賢くない人々が登場する初期の山下敦弘作品のキャラクターに比べると、こっちの方が人生への諦観が筋金入りだ。それでいてどいつもこいつも助平と来ている。カタルシスはないのに何故かしら見終わって元気が出るし、爽やかな気分で映画館をあとにすることが出来た。石井監督がここに提示する人生観が、好悪は別としてもその揺るぎなさ故にこの映画を成功させている。
佳作、お勧め。

人気ブログランキングへ