映画和日乗

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「英国王のスピーチ」監督トム・フーパー at TOHOシネマズ西宮OS

 今年のオスカー4冠。
 1930年代、英国国王の次男ヨーク公アルバート王子(コリン・ファース)は幼い頃から吃音に悩まされていた。折しも妻エリザベス(ヘレナ=ボナム・カーター)が言語療法士なるローグ氏(ジェフリー・ラッシュ)を見つけて来る。治療は開始されるがローグ氏はオーストラリア人。オーストラリアは嘗ての英国植民地、当時でも英国連邦の属国であった。ローグ氏はヨーク公をニックネームで呼び対等に扱おうとする。それは心理療法の一環なのだがヨーク公は反発、しばしば治療は中断される。しかし国王死去の後、ヨーク公の兄(ガイ・ピアース)が即位するも己が我がままですぐに退位、ヨーク公が意に反して即位しなければならなくなる。
ジョージ6世となったヨーク公はローグ氏を傍らに置く事で即位式を乗り切るものの、折しもナチスドイツがポーランドに侵攻、英国王として戦争宣言をしなければならないという事態となった…というお話し。
 英国近代史についての不明を恥じるほどわかり易い展開だが、開巻、ブルーがかった寒色のルックそして隅々まで計算の行き届いたフレーミングと編集にまず刮目させられる。IMDbのデータベースによると監督、撮影、編集共英国TV業界出身。英国でも映画製作事情は厳しいのだろう、こうして一本の映画として結実するに当って彼等スタッフのなみなみならぬ気合いが感じられる。
 そしてコリン・ファースジェフリー・ラッシュのハイレベル、超一流の演技合戦。そのシチュエーションからピーター・イェーツ「ドレッサー」('83)を想起したが、英国シェイクスピア演劇人の実力は他の追随を許さないことをあらためて思い知らされる。
 ひねりのないオーソドックスな展開だが、端正で繊細で緻密なつくり、英国クラシックの気品に陶酔してしまうのもむべなるかな。佳作、お勧め。
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