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「信さん 炭坑町のセレナーデ」監督・平山秀幸 at パルシネマしんこうえん

辻内智貴の同名小説の映画化。2008年に撮影され、完成するも配給が決まらず長らく公開されなかった。その間の製作サイドの大変な苦労は関係者から仄聞していたが、この劇場でようやく観る事が出来た。
1963年の福岡県、どこかの島の炭坑町が舞台。小雪演じる「駆け落ちまでして島を出た」のに、離婚して一粒種の男の子を連れて島に戻って来た美智代がヒロイン。
美智代に憧れる信さん(小林廉石田卓也)がタイトルとなっているが、彼等を取り巻く時代の風景、風俗がもうひとつの主役とも言えるほど凝ったロケセットとなっている(美術:安宅紀史)。平山監督は福岡出身、公式サイトのインタビューによると時代背景はご自身の青年期のそれと一致するようだ。が、過剰な思い入れはなく、多彩な登場人物をそれこそ多彩且つバランスよく描いて行く職人芸そのもの。
崔洋一監督とのコンビ作の多い鄭義信脚本だが、ここでは朝鮮人労働者家族の苦渋もややあっさりで(辛くてもケロッとしている柄本時生好演)それが成功している。父親代わりの叔父(光石研)の死後、雪の舞う夕刻に新聞配達をする信さんをボタ山から捉えるロングショットは泣けた。
GWということもあって劇場は満員御礼。佳作、お勧め。
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