映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「フェア・ゲーム」監督ダグ・リーマン at TOHOシネマズ西宮OS

 2003年、イラク戦争開戦に至るまでのブッシュ政権の欺瞞に満ち満ちた陰謀を暴くひと組の夫婦の物語。夫ジョー(ショーン・ペン)はアフリカ各国とイラクの大使を勤めたことのある外交官。妻ヴァレリー(ナオミ・ワッツ)は表向きは投資顧問会社員だが実体はCIAの諜報部員。映画はこのヴァレリーの凄腕ぶりと、二人の子供を守り育てる佳き母親ぶりとを交互に描き出す。リーマン監督は、所謂手垢に満ちたスパイアクション的演出を排しリアリズムに徹する。白眉は開戦直前のバグダッドの描写だ。本当のバグダッドで撮影はされなかった(imdbによるとヨルダンのアンマン)とはいえ、攻撃によって「殺される」ことを予兆させていて秀逸。執拗に無垢な子供達を見せることで「この後の悲惨」を想起させている。明らかに間違った戦争を描きつつ、撃ったり撃たれたりの描写を一切せずに緊迫感を途切れさせない。そして常に雨が降っていたり霧がかかっていたりと観る者の心理を圧迫して来る。一方、ジョーディベートは執拗なまでに長く見せ、聴かせる。そこは切らない。ここにはひとつの思想があり、徹底して言論のみで闘うジョーの姿勢そのものが演出の思想でもあると見た。
 ラスト、ここに描かれていたことが本当のことであったことを示すドキュメント映像に息を呑む。そしてエンドクレジットを見逃さないでもらいたい。役名の一部が白塗り、そして黄色で塗りつぶされている。このどす黒い負の歴史の象徴に見えるそれらに怒りと悲しみと恐怖を覚える。
公開劇場が少ない、見逃さないで。

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