映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「チチを撮りに」監督・中野量太 at 川崎市アートセンター・アルテリオ映像館

インディーズ、というより自主映画という言葉が似合うつくり。「かあちゃん」(渡辺真起子)一人娘二人の母子家庭。この三人を捨てて別の女と一緒になった「チチ」が危篤、かあちゃんはそんな元夫の忌の際の写真を撮ってこい、と娘二人を向かわせる。が、彼女らが父親の実家に到着する前に彼は死ぬ。娘達を駅に迎えに来たのは千尋(小林海人)、父親が一緒になった女の息子であり、彼女らの弟に当ることになる。娘達は父の家に到着するやいなや、「遺産相続目的」と目される…というお話し。
かあちゃん、が溌剌としているのが新しい。それでもそんな彼女がどうして元夫に浮気されたのかは描かれず、その元夫もまた次の女に逃げられているのだが、理由は判然としない。焦点は二人の娘に当てられており、母から離れた場所で自分達の来た道(=人生)を反芻し、母親、そして家族の有り難さに気がつく、というなかなか清々しい倫理に貫かれている。情緒的な叔父やどこか意気地なさそうな元夫と対象的なドライで明るい女達、恐らくは中野監督の女性像、母親像なのだろう。割り切りの良い清々しさは心地良くもあるが、それはまた男の側の描写を切った戦略的演出の効果だとも思う。


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