映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「はじまりのみち」監督・原恵一 at TOHOシネマズ西宮OS

太平洋戦争末期、撮影所を干された映画監督木下恵介(加瀬亮)が故郷浜松へ帰郷、病床の母親(田中裕子)を山奥に疎開させる為に兄(ユースケ・サンタマリア)と、雇った便利屋(濱田岳)と共に山越えをする道行きを描く。
木下監督作品は、1979年の「衝動殺人 息子よ」と翌年の「父よ母よ!」を封切りで観ている。従ってリアルタイムで観た印象は押し付けがましい社会派であった。後年いくつかの旧作を観てその印象は変わったものの熱心な観客ではない。が、今作は実写初監督となった原監督は並々ならぬ木下フリークらしく、本作でも慈愛と敬愛の眼差しで描かれている。
実際にあった話しらしいのだが母をおぶって山越え、となると嫌が応にも「楢山節考」('58)を想起するし(もっともあれは姥捨、こちらは母を生かす為の山越えなのだが)、道中の宿泊時に木下が見かける先生と子供達は「二十四の瞳」('54)だ。淡々と静謐に描く一方、感情のうねりは音楽に仮託する演出。キネマ旬報6月上旬号によると撮影実数は19日というハードスケジュール、それでこれだけ丁寧かつゆったりとした印象を得られるのは、原監督が対象への確固たるイメージが事前に出来上がっていたのでは、と推測される。それほどこの映画をつくりたかったという意志がにじみ出ている。
ラスト、かつての木下作品がダイジェストで紹介され、「破れ太鼓」('49)の主人公が本作の「カレーライスの便利屋さん」に重なっていることを知る。勿論、自らの不明を恥じ、本作の重要なモチーフとなっている「陸軍」('44)を筆頭に木下作品の旧作を観なければと反省。


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