映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「ペーパーボーイ 真夏の引力」監督リー・ダニエルズ at ヒューマントラストシネマ有楽町

1965年前後のマイアミが舞台。
うだるような暑い夏、保安官殺しの容疑者が碌な証拠もなく死刑判決を受けた、というようなことが黒人の家政婦のナレーションで語られる。その家政婦が働く家はマイアミ・タイムスという地元新聞のオフィス兼住居。妻に逃げられた男とその息子2人、そこへ転がり込んで来たNY自慢の鼻持ちならない女。息子2人のうちの兄ワード(マシュー・マコノヒー)は「ロンドンから来た」という黒人ライター(デイヴィッド・オエロ)と、死刑囚ヒラリー(ジョン・キューザック)と獄中結婚すると主張するシャーロット(ニコール・キッドマン)を自宅に呼び寄せる。シャーロットの運転手を勤めるワードの弟ジャック(ザック・エフロン)は、どうしようもないビッチのシャーロットに恋い焦がれるが相手にされない。一方、当局に掛け合ったワードはヒラリーと面会出来ることになった。ヒラリーは同席したシャーロットとエア・セックス、やがてヒラリーのアジトだった沼地の一軒家を見つけたワードとジャックはヒラリーの恩赦釈放にこぎ着ける。ジャックはねばったあげくシャーロットと初体験。その後故郷に戻っていたシャーロットの元に釈放されたヒラリーが現れ…というお話し。
原作を書いたペーター・デクスターが脚本も兼任。恐らくほぼ原作通りと思われ、文学的構造から抜け切らない部分(やたらと長い後半の沼地の描写)もあった。
前作「プレシャス」('09)で脚光を浴びたリー・ダニエルズ監督、16ミリフィルムを選択して黒人がボロクソに差別される'60年代の南部の日常の空気感を作り出している。愛のない話しだ。あるとすれば画面に登場しないワードとジャックの母親への恋慕くらいだ。ジャックは二十歳という設定だがイノセント過ぎで幼い、シャーロットへの恋情も劣情が勝っている。ヒラリーの当初の事件の真相が明かされず、そもそも観る側に遺恨を感じさせるでもない。作り手がサスペンスを捨てている。特異なキャラクターの人々の自滅、全てが自業自得。沼地ももっとミステリアスに映画にして欲しかった、何でジャックはワニに噛まれなかったんだろ。プールにすり替わるのもちょっとなぁ。全体的に強固な文体から抜け切られなかった印象。
16ミリ、イイ感じ。あとこの映画のニコール・キッドマンのような女優が日本に1人でもいたら「全部持って行ける」のに。


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