映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「ローン・サバイバー」監督ピーター・バーグ at 109シネマズHAT神戸

 米軍の対アフガニスタン戦争で実際に起きた、「失敗した作戦」を描く。
 冒頭、恐らくはドキュメンタリーと思われるネイビー・シールズの新兵訓練の模様が綴られる。脱落するとヘルメットを置く儀式があり、累々と並ぶそれが訓練の過酷さを物語る。さて、そんな訓練を耐え抜いた兵士達は、何より同志的結束が生まれるのだが、このことが本編の展開の伏線となっている。そしてあれほど戦闘のプロとして叩き込まれた筈の戦術が単純なミスによって脆くも崩れ去って行くのだ。タリバンのリーダーが潜む村への偵察、険しい山岳地帯であることは周知徹底しているのに、そこでは無線が不通である、という情報漏れ。なのに指揮系統がはっきりしている為に現場は無線で上官の指示を待たなければならないという官僚的事情。連鎖する悲劇。この映画が新鮮なのは、これまでほとんど描かれることのなかった米軍のルールをしつこく描いていること。異教徒、ファシスト共産主義者は悪だからどいつもこいつもやっちまえ!というアメリカ映画の定石がない。負け戦で思い出すのはリドリー・スコット「ブラックホーク・ダウン」('01)だが、リドリーのようなスタイリッシュな映像になることを本作では断固として拒否していて、「テンポの良い戦争映画」をも拒否、米兵たちはボロボロになって行く。
 また、本作が実話であることの結果でもあるのだが、イスラム教徒全体を悪として描いていない点も新しい。惜しむらくは「(タリバン兵達は)どうしてあんなに足が速いんだ」という米軍側の無知を、石山を駆け下りる少年のスローモーションだけで表現したことだ。タリバン兵の足の速さをちゃんと見せて欲しかった。
とまれ、これまで没個性な印象だったピーター・バーグ監督、リアリズムに転じて地肩の強さを発揮した。佳作、お勧め。


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