映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「リスボンに誘われて」監督ビレ・アウグスト at シネリーブル神戸

観終わってからポルトガルの現代史を検索して、本作の時代背景を知る。'60年代のポルトガルは秘密警察PIDEが住民を監視する圧政時代があり、1974年までそれが続く。
現代のスイスから物語は始まり、一冊の本に導かれるように夜行列車でポルトガルリスボンに降り立つ、ジェレミー・アイアンズ演じる独身の老教授ライムント。ジェレミー・アイアンズがこうしたシチュエーションで現れると即座にシャツをはだけてパンツを脱いで愛欲の限りを尽くすのでは、と想像してしまうが今回は違う。どちらかというと不器用で、自らをつまらない人間と決めつけている彼は、本の著者たるアマデウの人生を探る知の旅に出る。そして偶然が偶然を呼び、アマデウの関係者と会うことになる。偶然の出会いが、アマデウの本がいざなった必然に感じられるあたり、流石に名匠ビレ・アウグスト監督の語り口は巧い。ダサい眼鏡を掛けさせといて、偶然の事故の後、シャープで素敵な眼鏡に掛け替えさせそれ故にラインムントの男前が引き立つという演出も憎い。
そしてメラニー・ロランが登場、圧政時代のレジスタンス達をその美貌と知能で翻弄して行くファムファタールぶりはこの人以外に考えられない適役。ただ、その後の(30数年後の)彼女の役を他の人に演じさせたのは勿体ない気がする。メイクでどうとでもなったように思うのだが。
とまれ、シャーロット・ランプリングブルーノ・ガンツヨーロッパ映画界の重鎮を脇に置いて、見事な脚本。詩的な文体が暗示する人生の有り様が眼に沁みる。佳作、お勧め。


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