映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「紙の月」監督・吉田大八 at 109シネマズHAT神戸

角田光代の同名小説の映画化。原作は未読。先にNHKでドラマ化されている。
キネマ旬報11月下旬号の特集によると、原作とはいささか違っているらしく、映画オリジナルの登場人物が物語に於ける重要な役割を果たしている。
所謂銀行に於ける背任横領事件。だがそれは我が国で実際に起きた滋賀銀行の事件や、伊藤素子事件と本質を異にする。原作ではどうなっているかは不明だが、情念たっぷりに「男に貢ぐ」のではなく、自らの癒やしようのない心の渇きがモチベーションになっている。それ故か、アップショットの切り返しとスローモーションを多用したスタイリッシュなルックは、低温で情念の熱さの微塵も感じられない。梨花(宮沢りえ)と光太(池松荘亮)の出会いからホテルに行くまでの情感の動きが予め端折られているのかカットされたのかは分からないが、そういう判断(つまり、その情動は見せない)をしている点からも自明なのだが、それ故「そこから先」に乗れない。いや、そんなことはどうでもよくて低温な空気感に浸れる、という向きもあるだろうが。
藤本泉、ここでもキラリ。


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