映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「恋人たち」監督・橋口亮輔 at テアトル梅田

妻を通り魔に殺された男、「下痢ばかりしている女の元に現れる王子様」という物語を綴る主婦、クライアントを見下して親身な仕事をしないゲイの弁護士。この三人の些細な日常の変化を丁寧に描く。
極端な低予算を強いられ、無名のワークショップ出身の俳優達で映画を作らざるを得ない、というスキームは「滝を見に行く」('14)もそうだった。それを逆手に取った、と紋切り型の方法論では語れない力強さがこの映画にはある。
通り魔に殺された男の、裁判を起こすことが出来ない鬱屈を爆発させる独白のシーンで、途中の突然のズームアップは、それまで繊細な距離を保ちつつこの男に寄り添ってきた監督の目線に怒りと悲しみの感情が混じる瞬間である。
露骨な差別を語るアナウンサーの女性のシーンは、公式サイトにある「いまは言いがかりか通る時代」という監督の言葉の裏打ちだ。劣化した知性と単純な利己主義の言いなりになり、ただ逃げる、避けるだけのメディアへの怒りの礫が投じられている。
しかしそれにしても気になるのは、こうも全員が全員騙される人、騙されやすい人、そしてすぐバレるような詐欺か嘘しか仕掛けられない人ばかりという知的水準の低さだ。今の日本の一断片であることは他言を待たないが、今村昌平作品に登場するような狡いが逞しい女だって今もいるだろう。


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今年観た映画41本。洋画23本(うち旧作1本)、邦画15本。