映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「オーバー・フェンス」監督・山下敦弘 at シネリーブル神戸

劇場の幕が開くと、左右に黒味が残るサイズ、ありゃ珍しくヨーロッパビスタの画角。
そんなこだわりからゆっくりとドラマは始まり、淡々とした函館の、寄る辺ない若者達(いや、中年もいる)の日常が綴られ、主人公白岩(オダギリジョー)が出会った聡という名の女(蒼井優)の交際を軸に進んでいく。
焼肉屋の、仕掛けられた合コン。それまで優しさ一辺倒だった白岩が、周囲の神経に障る振る舞いに対して気色ばむあたりから映画が動き出す。
ラウンジバーでの聡の求愛ダンスに応える白岩の微笑みと抱擁に涙が出かかる。「ファイブ・イージー・ピーセス」('70)のカレン・ブラックを思い出した。
佐藤泰志原作の前作は好きではなかった。食い詰め者の思慮の足らない自滅がベストワンとはあまりに社会への了見が狭いと思った。が、今回はタイトル通りに、微かな希望を託して白球がフェンスを越えて行く。相当撮り方を考えたであろう、白岩のバッターボックス。愛を信じ、人生の再生を祈っている。
キャスティングが素晴らしい。傑作でしょう、お勧め。