映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「ミス・シェパードをお手本に」監督ニコラス・ハイトナー at シネリーブル神戸

邦題は理想の老後の過ごし方を描いているかのような誤解を与えかねないが、もともと舞台劇で、主演のマギー・スミスが舞台でも同じ役をつとめていたらしい。
フォークランド紛争を巡るサッチャー首相のインタビュー映像が出て来るところから1980年代前半の時代であることが伺える。冒頭、自動車事故を起こすシェパード、ただここではまだ被害者の姿が見えない。しかし轢き逃げであることは示唆され、その後彼女がバンに乗って、その中で生活、定住しない理由となる。さてコキタナい老婦人となったシェパードに作家として興味を抱いたのがアラン・ベネット(アレックス・ジェニング)。最初は自宅の前、そして遂には敷地内にバンを止めさせて生活の面倒を見る。このベネット(実在の原作者)、登場当初から双子のように二人現れる。これはベネットの内面の在り様を意見の違う二人として表出させる演出。なるほどこの手があったか。この映画、シェパードの人物像も決して通り一遍な「頑固で手のかかる老人」として描かない。強がる、しかし内面は臆病という二面性を繊細に描いている。カソリックについて不見識なので彼らのダイアローグの妙が分からないのがもどかしいが、同性愛を巡る宗教的かつ世間体的葛藤が融ける瞬間は見事。エンディングも粋。


にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村


2016年観た映画、新旧合わせて59本。ベストは「ボーダーライン」(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)。