映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「甘い夜の果て」監督・吉田喜重 at シネマヴェーラ渋谷

1961年松竹作品。

吉田喜重監督3作目、この次が名作「秋津温泉」('62)。ヌーヴェルバーグ前夜といったところか。

三重県四日市市が舞台。石油化学コンビナートの街、今と比べるべくもない都会ぶりだ。この街のデパートに勤める津川雅彦がその男前っぷりを利用して女を使ってのし上がろうとする。クラブのママ、食堂の娘、そして左前な鋳物工業の社長未亡人。のし上がる、という願望の目標がせいぜい高級マンション暮らしなのが目標なので話全体のスケールとしては小さい。競輪場のバンクをぐるぐるとオートバイで爆走する津川、遊園地の観覧車にしばしば乗っては上下にぐるぐると回る津川。どんなに急いでも結局同じところを走っている、どんなに上昇してもすぐに下降する、破れない階級の壁のメタファーか。ゴルフ場、コテージといった「上の階級」の舞台のシーンでずっと流れ続けるワライカワセミの鳴き声のような音もまた。

あの頃映画 「甘い夜の果て」 [DVD]

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