その名を知っていても全くの不見識であったジャンゴ・ラインハルトの戦時中のエピソード。
朗々と流れるロマの歌を遮断し、抹殺するモーゼルの銃声。このショットの連なりだけで時代とこれから始まる民族迫害の予感を感じさせる映画的なオープニングにまず居住まいを正す。
そして1943年をリアリズムで見せるルックに感心。あの時代、ランプと月明かりしかないロマ族達の夜を臆することなく暗いまま見せる。
ロマ族として迫害されているにも拘らず、その天才的なギターさばきでナチスのお眼鏡にかなったジャンゴは彼らのパーティで強制的に演奏させられる。スイス国境に近いレマン湖湖畔の屋敷でのそのパーティに乗じて反ナチ活動を実行しようとするレジスタンス。演奏内容を厳重に制限されたジャンゴが、どのようにしてレジスタンスに協力するかが最大の見せ場。
エンディングのレクイエム、ジャンゴのそれまでの演奏曲と資質と異なるその旋律に深く感動。
今年、アウシュビッツで見た、殺された夥しい数のロマ族のポートレイトとの符合、リトアニアのヴィリニュスで耳にした曲との符合に得心が行く。
佳作、お勧め。