映画的日乗

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「スリー・ビルボード」監督マーティン・マクドナー at OSシネマズミント神戸

www.foxsearchlight.com脚本兼任のマーティン・マクドナー監督は英国演劇界出身。資料によると米国をあてどなく旅をしていた途中、バスの車窓から見えた二枚の看板(ビルボード)に書かれていた怒りのこもったメッセージを目撃したことから本作の着想を得たという。

 開巻、車を運転するすっぴんと思しきフランシス・マクドーマンド演じるミルドレッドの無表情。即座に「ファーゴ」('96)の無表情だが素っ頓狂な受け答えをする警察官を演じたマクドーマンドを想起する。案の定マクドナー監督は、「ファーゴ」のマクドーマンドをイメージして脚本を書き、マクドーマンドに出演を断られたらどうしていいかわからなかった、と発言している。先日の「キングスマン:ゴールデンサークル」といい、コーエン兄弟って影響大きいんだと再認識。

 娘をレイプされ、焼き殺された母親の憎悪、復讐心。一度燃え上がった業炎は消えず、警察署の怠惰を批判する三枚のビルボードを掲げるところから物語は始まり、ムラ社会の事なかれ主義と理不尽、米国南部に公然とはびこる人種差別主義が業炎を強引に鎮火させようとするものの、折れないヒロインの復讐の火は更に燃え盛る。もう惚れ惚れするほどの最高級の演技合戦だ。しっかりと描きこまれたキャラクター、心情の転生を見事に演じるウディ・ハレルソン、そしてサム・ロックウェル!

 憎悪の連鎖を断ち切る一発の銃弾、そしてそこから贖罪の何たるか、が語られ、赦すということの意味を問いかけられる。ミルドレッドが自らの正義を貫き通しながら、心無い言葉で身体障害者を傷つけたことに罪を見出す瞬間に心震えた。そう、完全に正しい人間などいないのだと。

マクドーマンドとサム・ロックウェルの演技を堪能するだけで充分お釣りが来る、久しぶりにもう一度見たいと思った傑作。キネマ旬報2月上旬号の越智道雄氏の米国の地域性とその地域の民族性を解説している文を読んでから観ると合点行く点が多いだろう。

お勧め。