映画和日乗

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「30年後の同窓会」監督リチャード・リンクレイター at シネリーブル神戸

www.facebook.com  映画が始まってしばらくして強烈な既視感に囚われ、それが即座にハル・アシュビーの「さらば冬のかもめ」('73)である事を自覚したが、観終わって検索したところ原作者が同じだった。そういう事か。

 ずっと曇天のグレーがかったルック。陸軍士官学校を描いた「長い灰色の線」('55)という映画もあった。関係ないか。イーストウッドの「15時17分、パリ行き」('18)で描かれる「英雄」と、立場は同じなのに全く意味の違う「英雄」が描かれる。イーストウッドが普通の若者の稀有な体験、を「明るく」描いたのに対し、第二次世界大戦以降、恐らく全米中で遭遇したであろう普通の若者とその家族の寒々とした悲しみが描かれる。

 リンクレイターはダイアログに特異な才能を発揮する人で、ここでも時にダラダラとどうでも良い会話を展開する。しかし、やがてそれはイラク戦争で顔を跡形もなく吹っ飛ばされた21歳の青年がそんな無駄話をすることも出来ただろう、生きてさえいれば、こんなダラダラと生き長らえているオヤジ達のように、という意味合いを帯びて来る。

 最初から最後まで曇天の、オヤジ三人の道行き。しかし、このアメリカの平凡はこの国家の歪みを伝えて余りある。遺族の老婆が言う「何のための戦争?」と言う言葉が全てだった。「さらば冬のかもめ」をもう一度観たくなった。