映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「洗骨」監督・照屋年之 at 109シネマズHAT神戸

senkotsu-movie.com  洗骨、検索してみると現代では殆ど行われていない風習のようである。人が死ぬと火葬せずに風葬(映画では遺体が洞窟の中に納められていた)し、4年後それを取り出して洗う、というもの。死者との再会でもあり成仏の意味もあるのかも知れない。さて、沖縄諸島粟国島のある家族の若い母親(筒井真理子)が亡くなるところから映画は始まり、その葬儀に息子や娘が帰郷する。息子(筒井道隆)は一見東京で成功しているように見える、その妹(水崎綾女)は名古屋で美容師をしているが臨月が近い体で現れる。この、妊娠していることを観客に知らせる見せ方が巧いので、やや居住まいを直して映画に入って行く。古い家長のようなことを言って妹をなじる兄だが、二人の父親である信綱(奥田瑛二)は職もなく酒を呑むだけの男。不満をぶちまけるでなくだらりだらりと生きている。この信綱の姉(大島蓉子)がしっかり者でなんとかこの一家を支えているように見える。家父長制を重んじ、その延長としての儀式たる洗骨なのだが、ここではそれが崩壊している。

 人物の会話や動きの結末に必ずオチが設けられているところが照屋監督らしいがところどころさほどウケる訳でもなく、また理想的な母像が強調されている点も気にはなるが、いざ洗骨の儀式に入るあたりからこの映画は俄然熱を帯びて神々しいばかりに輝く。あれほどだらしなかった奥田瑛二が粛々と儀式を進めて行く。ネタバレになるので詳しくは書かないが、大島蓉子(名演!)は涅槃の菩薩となり、エンディングは「2001年宇宙の旅」('68)だ。家父長制度の復古ではなく、女性が繋ぐ未来の家族のかたちをキラキラと美しい海の波光が照らし、素直に心動いた。佳作、お勧め。