映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「バーニング 劇場版」監督イ・チャンドン at 元町映画館

www.burning-movie.com   村上春樹の原作「納屋を焼く」は読んだ記憶はあるものの内容はほとんど覚えていない。いやしかしそんなことはどうでも良いぐらいスリリングな映画だ。出資者にNHKがクレジットされており、テレビ版が存在する。50分以上カットしているようだがそれもどうでも良いくらいこの映画は新しい。いつ以来だろう、森田芳光監督「家族ゲーム」が1983か。あれを初めて観た時に感じた新しさがこの映画にはある。どの映画にも似ていないということで言えば大島渚以来だ。

 恐らくはノーライト、自然照明で撮影している。曇天や夜が黒で潰れるギリギリで撮られている、それはデジタル撮影だからこそであろう。フィルムなら潰れている。北朝鮮との国境付近だと説明される主人公の実家の庭、大麻でハイになった女が踊り、やがて暮れなずむオレンジ色のスカイライン(勿論それは狙った演出であるに違いない)の自然の光の美しさによってシルエットになっていく(そこにマイルスの死刑台のエレベーターが重ねられるとは恐れ入る)ショットは映画史に残る素晴らしさだ。

 脚本も撮影も全てが勇気ある選択をし、まだある筈だった新しい映画というものを証明している。もう一度観たい、何か見落としているのかも知れないと思わせる傑作。お勧め。