映画的日乗

映画、食、人。西に東に。

「グリーンブック」監督ピーター・ファレリー at 109シネマズHAT神戸

www.instagram.com  今年のオスカー3冠。

 1962年のNYから始まる。劇中ドン・シェリー(マハーシャラ・アリ)が警官にJFKの弟の司法長官に電話させるシーンがある。JFKの暗殺はこの翌年。孤高の黒人ピアニスト、ドン・シェリーが敢えて差別の激しい南部に演奏旅行に行く。その為には運転手としてだけではなく腕っぷしが強い男が要るということでオーディション、選ばれたのがイタリア系のトニー(ヴィゴ・モンテンセン)。押し付けがましく、野卑だが危機管理能力に長けた男。北欧系の筈のモンテンセン、素晴らしい化けっぷり。イタリア系のそれっぽい人はハリウッドに山ほどいる中敢えてそうしなかったプロデュースサイドの見識。が、しかし典型的ハリウッドコメディ畑のファレリー監督、説明がやや過剰。冒頭のレモネードのコップを捨てる件はさりげなさから程遠い。ロシア語でツアーメンバーと会話するシェリー、これで彼がどこでピアノ修行したか判るのだが、のちに台詞で説明する丁寧さ。ツアー中、これでもかと差別に晒されるシェリー、そのシェリーを意識的にも無意識的にも差別するトニー、表現としては直截で分かりやすい反面、もう分かってる事、でもある。一方ケンタッキーフライドチキンの件、元々黒人の食べ物であるフライドチキンを嬉しそうに貪り食うトニー(無意識的)、美意識故に食べたことのないシェリー(意識的)のねじれた対比は秀逸。 

 アカデミー賞というのは時にこういう分かりやすいものが受ける。いやでも「夜の大捜査線」('67、オスカー5冠)「ドライビング Miss デイジー」('89、同じく4冠)を思い出す。本作の中で、粧し込んだ助手席のシェリーを訝しげに見つめる貧しい黒人農夫達が出て来るが、「夜の大捜査線」の冒頭、綿畑で働く黒人農夫の一人の目が潰れているショットを見せるだけで時代と状況を伝えたノーマン・ジュイソン監督、格上。また、先に見た「運び屋」で車がパンクして往生している黒人夫婦に、「ニガー」と呼びかけ、苦笑されながら「今はそんな風には言いません」と窘められるイーストウッド諧謔の方に差別的であることの真髄を感じる。

 ともあれ、時代を伝える悪くない作品。

 

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