映画的日乗

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「轢き逃げ-最高の最悪な日-」監督・水谷豊 at 109シネマズHAT神戸

www.hikinige-movie.com   水谷豊監督第二作はサスペンス・ミステリー。途中で「真相」が見えて来るストーリーなので詳細は記せないが、ヒッチコックの「サイコ」('60)はヒントになっているだろうと思われる。

 神戸の街を俯瞰するドローン撮影が下降して一台の青いジープを追う。何とウチの近所、私のウォーキングコースをそのままなぞるように進んでいくのでキャメラが何処へ行くのか大体分かるという稀有な映像体験。そして青年二人(中山麻聖石田法嗣)を乗せたそのジープが若い女性を轢いてしまう。誰も見ていない、と逃げる二人。この二人は会社の同僚で学生時代からの仲間らしい。急いでいた先は結婚式の打ち合わせ。待っているフィアンセに妙に謙る婚約者、そして披露宴の司会をつとめるという友人。「身分違い」というクラシックな関係性がここで示される。それは良いとして、この二人の男の関係が高校時代のヒエラルキーで語られるのは腑に落ちない。やはりゲイであるという事の方が自然であろう。水谷監督の演出もそれをプンプン匂わせはするが、はっきりは描かない。ひと昔前のハリウッド映画のコードのようだ。二人の勤める会社内での露骨に暴力的な派閥争いもえらく古めかしいが、事ほど左様に水谷監督は映画全体のトーンとして今日的であることを拒否している。轢き逃げ犯として逮捕される婚約者に献身的について行く女性の身振り、被害者が遺した日記の文体もまたそうだ。一方で画作りのセンスは秀逸。被害者の親夫婦(水谷豊と壇ふみ)の住んでいる家の窓外にケーブルカー(摩耶ケーブルだろう)が行き来する画、中山麻聖の車、衣装、自宅のインテリアに至るまでブルーで統一する事で性格付けをする演出、石田法嗣と格闘する水谷を傍観する人々の佇まいなど決して退屈させない。

 「サイコ」が近親相姦を匂わせていた事で衝撃が深まっていた事を思うと、やはり轢き逃げ犯二人の男の関係が最後まで引っ掛かった。娘が死んでも決して泣かず、微笑みさえたたえていた壇ふみの、堪えっぷり、そしてそれが決壊する瞬間が素晴らしい。

 

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