エンドロールであっ、となった脚本はジャン=クロード・カリエールだ。なるほど昔のゴダールの香りが微かにするなと思ったら宜なるかな。名前はフランス系だがNY出身のジュリアン・シュナーベル監督は「潜水服は蝶の夢を見る」('07)が素晴らしかった。映画畑ではなく、画家出身。「潜水服」もそうだったが、一人称の見た目と二人称、三人称のそれを織り混ぜる。一人称の画の時は画面下に紗がかかる。殆どフィックスの画はなく、手持ちのグラグラと揺れるキャメラ。動的な森羅万象を切り取り、永遠の時間を四角いキャンバスに閉じ込める創造が絵画である。決められた構図を映し出す事を拒否し、ゴッホという画家がいかにして自然の一瞬一瞬を切り取ったかを、疾走する足元を捉える一人称と、野原を駆け巡る姿を追う三人称のキャメラで表現している。
アンバー色、いや原色に限りなく近い黄色が空間を支配する。それは太陽と向日葵。ゴッホの絵を強烈に印象付けている黄色をキャメラはキラキラとした自然光の中からも掬っていて、陶然としてしまう。タチアナ・リゾフスカヤのピアノ音楽が秀逸で美しいルックと相まってその効果はいや増す。アートに生き、アートに死す。佳作、お勧め。