映画的日乗

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「ジョーカー」監督トッド・フィリップス at TOHOシネマズ日比谷

www.imdb.com 冒頭、初期のイーストウッド作品などでお馴染みの1970年代のワーナー・ブラザースロゴマーク。ここでこの映画が1970年代のアメリカ映画を意識してね、というサインを送っている事に気づかなければならない。架空の街の筈のゴッサムシティは明らかにあの頃の治安の悪い時代のNYである。その頃のNYを舞台にしている代表作といえば「タクシードライバー」('76)と「アニーホール」('77)という両極の映画だが、もう明らかに「タクシードライバー」のトラヴィスが本作のアーサーことジョーカー(ホアキン・フェニックス)に重ねられている。ベトナム戦争帰還兵にして不眠症のタクシー運転手、大統領候補の選挙に異様に興味をもち拳銃を手に入れる。上半身裸になって鏡に向かって独り言で問いかける。指鉄砲でこめかみを弾く仕草、手に入れた拳銃でコンビニ強盗を射殺。本作への影響はあからさまだ。そういえばトラヴィスも日記つけてたな。

そしてそのトラヴィスを演じたロバート・デ・ニーロがテレビ司会者としてジョーカーと接点を持つ。ああ「キング・オブ・コメディ」('82)のあのコメディアン志望のあの男がどうしても重なる。そして本作のアーサーもまたコメディアン志望だ。そうやって観て行くとこの映画は楽しくて仕方がない。高架上を走る地下鉄内でのチェイスは「フレンチ・コネクション」('71)、精神病棟と枕での圧殺は「カッコーの巣の上で」('75)、テレビ番組での司会者射殺生中継は「ネットワーク」('76)と同じだ。「カッコーの巣の上で」を除けば全てNYが舞台の映画である。監督・脚本のトッド・フィリップスは1970年NYブルックリン生まれ。あの頃のNYを肌感覚で知っていることは自明である。

 憎まれっ子世に憚る、そして彼はジョーカーとなった。という予め設定された結末に向けて逆算して作った、作らざるを得なかった脚本にかくも見事に「素晴らしきあの頃映画」をはめ込んで行ったかと感心した。1分たりとも飽きなかった、楽しかった。大ヒットだそうだが、先のタランティーノ作品と同じく本当に楽しめるのは長く沢山のアメリカ映画を観てきた人間だと断言しておこう。

 

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