映画的日乗

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「台湾、街かどの人形劇」監督・楊力州 at ユーロスペース

machikado2019.com

 侯孝賢監督が監修。侯監督の名作「戀戀風塵」('87)に登場し、「戯夢人生」('93)でその半生を描かれることになる布袋戯の名人、李天禄の息子、陳錫煌を追うドキュメンタリー。陳氏の人形を動かす手と指の動きが繰り返し映し出される。日本の文楽にしても他の国の人形劇にしても、人形を操るのは糸であったり細い棒であったりするが、布袋戯は読んで字の如く布の袋を手そのものに被せて動かす。それも両手を使って、時には飛翔し左右が入れ替わる。いやとても昨日今日で出来る芸当ではない。当然長い訓練と修業を要するが、陳氏は齢八十を過ぎても「李天禄の息子」と呼ばれ(李天禄本人に間違われてアナウンスされてしまうシーンがある)てしまう程先代は偉大なのであった。

 満身創痍の陳氏だが、エネルギッシュに台湾全土で活動を続ける。それは伝統の継承を使命としているからだ。が、台湾各地で布袋戯は絶滅の危機に瀕していて、たまにコンテストもあるのだがUFOも登場するマンガチックな現代風にアレンジされており、陳氏は憤慨する。後継の弟子も登場するが人間関係が複雑なのか、どうも盛り上がりに欠けている。何処の国も希少芸術の存続は行政頼りで、台湾もご多分に漏れない。劇団結成には申請してから三年を要するのだと言う。ようやく嘗てのメンバーが再開してのフルオーケストラによる布袋戯がクライマックス。が、楽団のメンバーはこの後櫛の歯が欠けていくかのように亡くなって行く。

 ラスト、陳氏の記録、伝承、後継への涙ぐましいまでの奮闘ぶりに、すぐにでも台湾に行って布袋戯を見たくなってしまった。