映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「ゴジラ vs コング」監督アダム・ウィンガード at 東宝マーケティング関西営業所試写室

 

上映前に東宝宣伝部の方から「映画中盤以降のネタバレ禁止」のお達しが。

 映画が始まるといや確かにそれは公開前に言わない方が良いだろうという展開。しかし検索してみるとバレてますな。

 僕らの世代はキングコングといえば1976年のジョン・ギラーミン監督版がリアルタイム。ジェシカ・ラングに恋したのはコングだけではなく世界中の中坊の筈。

 そして対ゴジラということで言うと一度闘っている。1962年版。


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 今回はこれのリターンマッチ、という訳では全くなく、レジェンダリーピクチャーズのコングシリーズと「キング・オブ・モンスターズ」(2019)の合体。

 前作で特攻隊のように死んで行った芹沢博士(渡辺謙)の息子として芹沢蓮(小栗旬)が登場する。この蓮がちょっとイマドキのマッド・サイエンティストで面白い。

 蓮の上司シモンズ(デミアン・ビチル)はエイペックスなる音楽ではなく何で儲けているのかよくわからん企業のトップ。

 彼は怪獣達の闘いのマウントを取ろうとしているが、この野望に気がついたエイペックス社の元従業員は自らが語り部となって情報を流す。この辺りは昨今のQアノン的陰謀論っぽい。それを信じた若者達(一人はオタク丸出し)は元従業員と合流してエイペックス社に潜入を試みる。

 一方、コングは地球上ではなく、深いトンネルで繋がった別の世界に生息していて、それを管理している学者と聾唖の娘がいて、聾唖の娘はコングと会話出来るらしい‥‥という展開。そんな中地上ではフロリダ辺りでゴジラが暴れ出す。

 試写室で観るような映画ではない。只管に怪獣バトルを大画面、大音量で楽しむ為の映画である。

 後半、決戦の舞台は香港が選ばれ、破壊し尽くされる。

 民主主義から大きく後退した香港、人民解放軍はパタパタと飛ぶヘリで「見てるだけ」状態。習近平体制をぶっ潰せるのはゴジラとコングを合わせた破壊力が必要、というメッセージと捉えるのは穿ち過ぎか。

 言いたいことはあるが公開前なのでここまで。IMAXで楽しむのがベストでしょう。

5月14日公開。

「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」監督トッド・ロビンソン at 塚口サンサン劇場

www.thelastfullmeasurefilm.com Full Measure は「完全なる対価」とでも訳すか。新約聖書にもしばしば使われているようで、神を信仰することで与えられる完全なる対価が幸福だとすれば、ここでは一人の兵士が国家に殉じた事への完全なる対価を問うている。

 実話がベースとのこと。

 1966年のベトナムに於ける米軍第一歩兵師団がベトコンの待ち伏せ攻撃に合い多くの犠牲者を出すが、一人の名もなき空軍兵士の勇敢な行動によって全滅の危機を免れる。 当のピッツェンバーグ上等兵(ジャーミー・アーヴィン)は戦死、生き残って帰国した兵士達は彼に最高位の名誉勲章を与えるべく運動をするが何故か却下されたまま32年の時が過ぎる。

 戦闘シーンのロケ地はタイらしい。この記事は事実と映画を比較していて面白い。

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 映画はペンタゴンに一人の元曹長(ウィリアム・ハート)が訪ねるシーンから始まり、前途洋々出世欲満々のエリート官僚スコット(セバスチャン・スタン)にピッツエンバーグへの勲章授与の為の再調査を依頼する。

 スコットは年齢的にはベトナム戦争終戦後の生まれなのであろう、その知識がなく当初は気の進まないお役所仕事としての調査だが元兵士達に話しを聞くうちに気が変わっていく。

 今は亡きとても良い奴を、彼を知る人々の証言でその人物像を浮かび上がらせる、そう「横道世之介」(2013)の構成だ。

 もっともこちらは過酷な戦場がその過去として挿入されるので悲哀の度合いが違う。

  元兵士達にピーター・フォンダウィリアム・ハートサミュエル・L・ジャクソンエド・ハリス

 ピッツェンバーグの父親にクリストファー・プラマー

 嗚呼1970、80年代の映画俳優。

 極め付けは終戦後帰国せずベトナムに残っているという男にジョン・サヴェージ。「ディア・ハンター」('78)でベトナム戦争で負傷して半身不随になって帰国する男と否が応にも重ねてしまう。

 

 ウィリアム・ハートは「再会の時」('83)でもベトナム帰還兵だった。

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  監督かプロデューサーかはいざ知らず、これらのキャスティングはアメリカ映画史を強く意識している筈だ。フォンダもプラマーも本作が遺作となってしまった。

 横道世之介並に善人であるピッツエンバーグがPTSDを抱えた元兵士達の「自殺する勇気を押しとどめている」心の支えである事を次々に吐露していく。ウィリアム・ハートの魂揺さぶる慟哭は観ているこちらもつられて涙を禁じ得ない。この人のここでの演技の凄みは「蜘蛛女のキス」('85)以来ではないか。

 そのウィリアム・ハートの凄みにいざなわれて、後半は怒涛の名誉回復、Full Measureへとなだれ込む。

 号泣であった。

 勲章授与を阻んでいた政治的理由の黒幕の一人も授与式で拍手していて改心しているように見えてしまうのは楽天に過ぎないかと思ったが、最後の最後、今一度ピーター・フォンダを登場させて締め括るセンスを褒め称えたい。

 佳作、地味に公開されているが長年アメリカ映画を見続けている人には胸に沁みる何かがある筈。

 

「あしやのきゅうしょく」撮影13日目クランクアップ

怒涛の13日間だった。
天候には恵まれた。雨での中止は一度もなかった。
何より、子供がたくさん出る映画で例の疫病が発症しなかったこと。

Pとは4度目のタッグ、撮影部、美術部は「みとりし」以来の2度目、照明部は二十歳の頃から一緒の仲間。

演出部チーフは「ママ、ごはんまだ?」以来。
この気心の知れたスタッフでなければ乗り越えられなかった。
配役は主演の松田るか以外はまだ公表できないが、自分が熱烈に観ていた作品に出演されていた方々だけに、そのフィルモグラフィに私の作品が加わることが光栄でならない。

この映画に携わった全ての方に感謝。