既に20本近い映画をつくってここに来て最高傑作を放つ映画監督というのは世界的にも珍しいのではないか。
それほどまでに素晴らしい井筒監督最新作。
1968年京都、朝鮮高校と普通高校の学生たちの恋と喧嘩の日々。お寺のボン、松山(塩谷瞬)はフォークブームでギターを買ったばかり。一目惚れした焼き肉屋の娘、キョンジャ(江尻エリカ)の為にフォーク・クルセーダーズの「イムジン河」を覚え、唄うが、日本と朝鮮半島の間にある深い河の意味をも知らされる。
一方キョンジャの兄アンソン(高岡蒼佑)は、帰国船で北朝鮮に帰り、ワールドカップに出場することを夢見つつ、喧嘩に明け暮れ、ガールフレンドを妊娠させてしまう。この、高校生たちの演技は精緻にナチュラルで素晴らしい。プロフィールによると関東出身も多いのに、恐らく徹底的に関西弁と朝鮮語を仕込んだのであろう。オダギリジョーのヒッピー兄ちゃんは「ほんとあんな人いたなぁ」の極地。
声高に被害者意識を叫ぶこと無く、深く静かにボティーブローを与えつつ、クライマックス、アンソンの仲間の葬儀で情念を爆発させる。
この前後の展開の見事さは、映画的興奮の極地であり、号泣しつつ唸るしかなかった。
良くも悪くも韓流に湧いた今年、井筒監督は「半分正しいが半分間違ってるぜ」というメッセージを送っているかのようだ。
傑作、大お勧め、必必必見。2005年1月公開。
もしこれが今年の映画だったら迷うこと無く邦画のベスト。