映画和日乗

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「火火」監督・高橋伴明 at シネカノン神戸

古代の遺跡から発掘された焼き物の復元を目指して信楽焼の創作に打ち込んだ神山清子氏の実話。
また神山氏は息子を骨髄性白血病で亡くしており、骨髄バンクのドナー登録を推進している。
 冒頭、その亡くなった息子(窪塚"弟"俊介)のお棺が家に戻って来るところから始まる。
 従って観客は、映画中盤に息子が発病し、骨髄ドナーを求めて懸命に奔走する清子達を観つつ、最後には「果たせなかった」事実を知ってしまっているのだが、そういう一種の冒険的構成が見事に成功している。
 高橋伴明監督、「光の雨」('01)に続きその演出の巧さに感嘆敬服する。
僕は高橋監督の映画を初めて観たのが'81年の「襲られた女」からだが、本当に日本一巧いと思う。
本作では脚本も兼任、唐突に弟子入り志願する女(黒沢あすか)がパニック症候群だったことが判るシーン、孫の出産祝い金を無心する長女(遠山景織子)に清子が経費の帳面を突きつけて反論するシーン、そしてラスト、清子が葬列を離れて窯へ向かうシーン…ほれぼれした。
 ただ、芸達者な田中裕子、池脇千鶴石田えりらに囲まれて、窪塚君はまだまだ、な感じ。
骨髄バンクへのドナー登録を呼びかけるシーンがややうるさいが、それを衝くと、この企画の成立の根幹を揺るがすだろうから目をつぶろう。
名古屋弁の看護士役、鈴木砂羽がイイ。だが、看護士たるもの、死を迎える患者の前では仮令見えていなくても絶対涙を流してはいけない。お勧め。

火火 [DVD]

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