映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「放浪記」監督・成瀬巳喜男 at 九条シネ・ヌーヴォ

1962年東宝作品。林芙美子の自伝的小説の映画化。戦前、九州の物売り娘(高峰秀子)が上京して貧困に喘ぎながら詩を綴り、遂にはベストセラー作家として功なり名を遂げるまでを描く。
ここでもまた成瀬監督の絶妙な目線演出に刮目。高峰に憧れ、尽くし続ける加東大介の、初めて高峰と共に登場する時の加東の一瞬の瞬きの見事さ。そして常に彼の視線を外し続ける高峰が、金を無心する時に初めて交わす目線の悪意。愚図で、時にずるく、イイ男にゃ目がなくて…安直なヒロイン昇華物語に淫しない、ラストに至っては成金見栄張りぶりまで付け加える突き放しぶり。役者は全て素晴らしく、下世話な男女話しなのにお腹いっぱいのエンターティンメント。純愛ものという名の下につくられる昨今の映画が
全て幼稚に見えて仕方がない。

放浪記

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