映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「杏っ子」監督・成瀬巳喜男 at 九条シネ・ヌーヴォ

1958年東宝作品。原作は室生犀星。愚図で無能な男(木村功)と妻・杏子(香川京子)の不幸な諍いを延々と見せられる。
杏子の父は大作家(山村聰)で犀星自身がモデル、ということは杏子は犀星の娘がモデルな訳だが、
成瀬は撮影が始まるまでそのことを知らなかった、と語っている。ホンマかいな。ともあれ、木村功の粘着ぶりは異常だ。
全く好転する兆しもない夫婦関係、ただ大甘なだけで何の解決にも寄与しない父、とこの突き放し方がやはり成瀬。
ラストに至っては希望があるのかないのかよく分からない。この曖昧さが却ってクールだ。