映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「春の雪」監督・行定勲 at 東宝関西支社試写室

三島由紀夫の同名小説の映画化。大正年間、没落貴族の娘(竹内結子)、「格落ち」な士族の息子(妻夫木聡)は
幼なじみ、長じて再会するも運命は容易く二人を結ぶ事はなかった…というお話し。詳細は省くも
この物語の優雅な骨太さはやはり第一級。行定監督は大正ロマンに淫することを避け、力一杯
この大恋愛を絢爛豪華に描く。妻夫木の残酷にして幼稚な心理が、純な愛情へと昇華する過程を繊細にして
精緻に描ききった。応えた妻夫木も敢闘賞。小首を傾げて慇懃無礼ぶりを表すのも様になっている。
一方竹内はやはり顔に「妊娠してます」と書いているかのようで、コメカミに青筋たててドテドテと
身を庇うような動きに限界を感じた。申し訳ないがどうしても下町カワイコちゃんだ。
それを補ってあまりある岸田今日子若尾文子、そして石橋蓮司のキャラクターと圧倒的な演技力、風格。
 重厚な美術、野心的な撮影、照明も最大限力出し切っている。2時間30分全く飽きない、それだけでも見事。
小振りなセーシュン映画か大味な公共事業型大作の蔓延る邦画にあって威風堂々、お腹いっぱいの大娯楽映画。お勧め。

春の雪 [DVD]

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