映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「ロード・オブ・ウォー」監督アンドリュー・ニコル at OSシネフェニックス

1980年代初頭、NYのロシア人居住区である抗争事件を目撃したユーリ(ニコラス・ケイジ)は武器商人になることを思い立つ。弟のヴィタリー(ジャレッド・レド)と共に出掛けた武器の見本市で、大物武器商人(イアン・ホルム)に素人扱いされて門前払いを喰らうが、持ち前の商魂でのし上がって行く。そしてソ連邦崩壊が彼にチャンスを持たらす。だぶついた旧ソ連軍の武器を大量に買い叩くことに成功するのだ。そして彼はこの武器を紛争国であるソマリアで売りさばこうとする…というお話し。
武器商人の世界、というこれまでありそうでなかったステージに着目しただけでも成功している。そして戦争あるところに商売あり、と世界で最もダーティでデンジャラスな仕事を描きながら、そのニーズの根本は国家であり、彼等は「必要悪」として各国家のお抱えである、というところにまで踏み込んで描かれる。
同じソマリア紛争を描いた「ブラックホーク・ダウン」('01)とは一線を画し、この国の悲惨な現状は、欧米のアフリカ軽視政策が持たらしたものだと指摘もしている。
この、汚い男を汚い男として弾劾したところで戦争はなくならないのだという笑えない皮肉で締めくくりつつ,
2001年のNYを行く主人公のカットは、その先にある「9.11」を暗示させる。
徹底してシニカルな視点は現代アメリカ映画として貴重。だが、実際はもっと陰惨で残虐な筈だ。まだ私たちはこの映画が「正視」に耐えられているレベルであるという点を自覚しなければならない。

ロード・オブ・ウォー [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 日活
  • 発売日: 2006/06/09
  • メディア: DVD