原題は"North Country"、つまり「北国」。舞台はミネソタ州の北部、冬。
ただの北国を描いているのではない、鉱山労働の過酷な実態と、田舎の閉鎖性と差別、それら全てを
ひっくるめて、厳寒の「北国」を意味する。1989年、DVに苦しんだジョージー(シャーリーズ・セロン)
は、夫を捨てて二人の子供を抱えて実家に戻る。古い友人、グローリー(フランシス・マクドーマンド)に
誘われ、鉱山労働者として勤め始める。が、それは反駁する父親(リチャード・ジェンキンス)の職場でもあった。
町の大多数がこの現場で働き、それ以外の職が望めない。故に「出戻りの不良主婦」は、のっけから
差別とセクハラの嵐に晒される。それは彼女だけに限ったことではなく、数少ない女性労働者全て
に対し、日常的に行われていた…というお話し。勿論、それに屈する事無くジョージーは立ち上がり、
遂には裁判に訴える、という脚本の流れは映画冒頭で容易に想像がつく。女性監督故か、男は殆ど
ろくでなしに描かれ、ジョージーの担当弁護士(ウディ・ハレルソン)も実に優柔不断で頼りない。
どうにも八方塞がりな展開を、どう好転させるのかと思いきや、フランシス・マクドーマンドの
ほれぼれする千両役者ぶりで一点突破する。この演技を観るだけでこの映画は値千金、お勧め。
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